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> 「貸借対照表」と「損益計算書」と「申告書」
公認会計士と税理士の違いをご理解いただくために、まずはこの3つを簡単に説明しましょう。 「貸借対照表」とは会社の持ち物(財産)を金額で示すものであり、「損益計算書」とは会社がいくら儲けたかを金額で示すものです。 皆さんがご自身で事業をされるとしたら、まず「この一年間にいくら儲かったか?」が気になるでしょう。これは、損益計算書に、例えば100万円儲かりました、という形で表示されます。 次に「現在の会社の持ち物は、何がいくらあるのか」も気になるでしょう。これは、貸借対照表に、例えば現金が10万円、車が100万円、という形で表示されます。 さらに「申告書」とは、今年はいくら儲かったので、私の納めるべき税金はこれくらいになりますよということを示すものです。 さてここで、いくら儲かったかは「損益計算書」に示されるのだから、「申告書」は別に作らなくてもよいのではないかという疑問がわくのではないでしょうか。事実、「損益計算書」で示された儲けと、「申告書」で示された儲けがほぼ同じという会社は多いです。 しかしながら、実は、この「損益計算書」と「申告書」の儲けの数字がほぼ同じということが、会社の実態をわかりにくくしている原因なのです。 本来、「損益計算書」と「申告書」は作成するときの基準が異なります。それは、「損益計算書」は会社の儲けを把握するためのものであるのに対し、「申告書」は税金の計算をするためのものだからです。 目的が異なれば、基準すなわち作成するためのルールが異なり、計算される数字も異なるというのは会計の基本構造です。これは会計の相対的真実性といわれており、会計には絶対的な真実があるのではなく、各種目的に照らした相対的な真実があるのだということです。 ごく簡単な事例で考えてみましょう。運送業をはじめたとします。車を500万円で購入し、売上は1,200万円でした。簡単にするために、自分の給料など他の費用は無視します。 会社の儲けを把握するという目的のためには、自分が納得できる基準、すなわち自分が会社の実態を把握するための基準を用いれば結構です(もちろん、ある程度の決まりはありますが、話を簡単にするためにここでは触れません)。 つまり、Aさんは、車のために支払った金額がすべてなくなったものと考え、売上1,200万円から車500万円をひいた700万円を、今年の儲けと考えるかもしれません。 また、Bさんは、車が10年くらいは使えそうなので、支払った金額500万円の1/10である50万円をひいた1,150万円を、今年の儲けと考えるかもしれません。 ここでは、計算された儲けが自分の感覚と一致していればよいのです。Aさんの損益計算書で示された儲けは700万円、Bさんの損益計算書で示された儲けは1,150万円ということで問題はありません。 ところが、税金を計算するという目的のためには、公平性が求められます。公平性というのは、同じ経済活動には同じ税金をかける、ということです。つまり、「車を500万円で購入し、売上が1,200万円だった」という経済活動に対しては、同じ額の税金をかけなければなりません。 そのために、運送用車両は5年間使えるものと一律に決めてしまい、500万円の1/5である100万円を1,200万円からひいた1,100万円を、税金を計算するための金額とするのです。これが申告書で示されるべき数字であり、AさんもBさんも同額となるのです。 つまり、自分の感覚にあうように(=自分の経営に生かせるように)損益計算書で儲けを計算し、その後、申告書用の儲けに調整するというのが本来の姿なのです。このようにしなければ、損益計算書は会社の実態を示すことにはなりません。 しかしながら、本来の姿で計算することは手間がかかります。損益計算書用の数字と申告書用の数字の両方を管理しなければならないからです。倍までとはないでしょうが、かなり手間が増えてしまいます。 そこで、多くの場合は損益計算書の儲けを、最初から申告書の儲けと同じになるように計算します。こうすれば、後から調整する必要がなくなります。しかし、そのように計算された損益計算書は、税金を計算するための書類になり、会社の実態が示せません。 このような損益計算書、あるいは申告書そのものを見て、経営者がよくわからないと言うのも当然といえば当然です。税金を計算するための儲けは、経営者が感覚でとらえている儲け、会社の実態とは違うからです。 優秀な経営者は、数字が苦手だといいつつも感覚的に自社の儲けを捉えていることが多く、そのように優秀な人ほど、自分の感覚と違う損益計算書や申告書に違和感を覚えるかも知れません。 なお、「貸借対照表」は損益計算書と一体で考えられますので、損益計算書とセットになった会社の実態を示すための「貸借対照表」と、申告書とセットになった税金計算のための「貸借対照表」があるとお考えください。 以上が、「貸借対照表」と「損益計算書」と「申告書」の簡単な説明になります。 |
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